時の旅


そういえば、昨年も雨じゃなかったっけ?オットと二人で、会場についてから気がついた。
東京駅ちかく、京橋のギャラリーくぼたで開催される竹宮恵子先生の個展。
昨年は『地球へ…』がテーマで非常な混雑の中、それでも胸を熱くしてジョミー達に眺め入ったのだけれど。
今年は「ファラオの墓」がメイン展示と伺って、それもまた非常に感慨深く、今日までに何度もサリオキスやスネフェルのことを思い出していた。
この作品ではスネフェルとアンケスエン姫が大好きだった。(ナイルキアを好きにならずにはいられないから、わざわざ書くまでもない。もう一人,後にサリオキスを結ばれる予感を感じさせる姫君?可愛いけれど凛々しいタイプの方がいて好ましかったのに,今どうしても名前が思い出せない)昔発売されたこの作品のイメージアルバムも持っているのだが,実家から取り寄せるのが間に合わず残念。もっともLPだから今は手元にあっても聞けないのだけれど、それでも中のライナーを読み返し,竹宮先生のコメントを再読したかったなあと思う。作品のイメージにぴったりだと、当時の私と友人達は感心して、しばらくは誰の家に集まっても『ファラオの墓』のイメージアルバムを聴いていたものだ。いや,それ以前に『ファラオの墓』を全巻、祖母が大人買いしてくれた時の感激と感謝の気持ちは今もまだ胸に熱く甦る。そんな贅沢はめったにさせてもらえない家庭だったので、夢かと喜んだものだ。母はおばあちゃんが耄碌したと激怒したが、なんのことはない、祖母もこのファラオの墓…豊かな美しいエジプトの中の小国が野心ある他国の若き残忍な王に突如攻められ、滅ぼされる、辛うじて生き延びた王子が故国再興と復讐の夢を遂げるというストーリーにかなり惹かれた様子だったのである。しかも王子の母と敵王の母は…そして王子の妹は敵王と…などなど、ドラマチックでロマンティックな要素一杯。これをちびちび一冊ずつ買うのではなく、一気にまとめて入手して一気に読破するという喜びは今だって相当なものだと思う。我が友人達は歓喜して私の家に集まり,みんな順番で読みふけったし,後にはしっかり私の母自身もハマったのだった…。
そんなことなどを次々に思い出す。
今は亡き祖母、そして父。年取ったけれど元気な母、結婚して子育てをしている友人、あるいは独身を謳歌中の友人達…個展会場に入らせて頂くまでの間だけでも『初めて<ファラオの墓>を呼んでいた頃」というキーワードひとつで、ざっと一通り自分の半生という時の回廊をすら旅してきたような気持ちに、もう私はなっていた。

入場して、カラー原稿の美しさにまず息を飲む。
目が吸い寄せられて離れない。
あまりにもよく知っていて,今までにも何度も見とれて来た印刷された先生のカラーイラスト。
その原画を今,この目の前にしているという幸運が信じられない。
やはり先生の貴重なイラストも出版社側で紛失されるという厄災をご経験なさっている、けれど謝罪を受け入れ,その後、やはり非常に気に入っている作品だからと出来るだけ当時の作風、色あいを思い出しながら再度描かれたという美麗としかいいようがない絵の前でたたずむ幸福。
そしてこの新しい年に新しく描かれた素晴らしい絵。眼福そのものだった!
人が少なく、ゆったりできたのも幸運だった。
幸福はさらに続く。
わんマネさまこと、竹宮先生の御妹君さまとお話できてしまったのである。
あまりにお優しく,暖かいお人柄で接してくださって泣きそうになってしまった。
こういうとなんなのだが、結婚というのは勢いでするものだと思う。私がその勢いのままにオットと結婚すると宣言したとき、皆にあまりのスピーディー決断を驚かれ,本当にいいのかと何度も尋ねられたのだがいい、いい、と迷わなかった私。その後「うーん、はやまったか」と思う事は何度もある(明日にもまた思うかもしれない)が、やはりよかったのだと今日は確信した。オットがささやかなご縁を先生に頂いていたおかげでお話できるきっかけを持てたから。そうでなければ私にはとても、先生とわんマネさまとお話する勇気はだせなかったと思う。

もったいない、とはこういうことを言うのだろうと本当に思う。
先生もわんマネさまも他のスタッフの方々も,例外なくどのファンの方にも非常に寛大でお優しい。その様子は私も遠くから漏れうかがっていたし、昨年の大変な混雑の個展の最中でもそのようなご様子だったのを実際にお見受けしている。
しかしまさか私自身がその光栄に浴する事になるとは正直全く思っていなかったのだ。オットがご挨拶せねばならないことになり、隣で少し会釈だけでもさせて頂いてと思っていたのだが、オットが私にとって人生で一番の,永遠に大切な存在がジョミーであることを話していたために、本当に優しく接して頂く事になってしまったのである。
あまりにもったいない時間過ぎて、とてもまだ言葉にできない…。
ただ会場に,『地球へ…』の原画コーナーもあったことが私には最高の喜びだったことを、その作品一点一点をご案内頂いてしまった喜びを、いつまでも記憶にとどめておく。
アニメについても少しお話して、ちょっと苦笑いになってしまったのだけれど、でもそのおかげでこうしてまた竹宮先生が新しく『地球へ…』を描いてくださったこと、21世紀のジョミー達に出会えた事を本当に深い深い喜びに感じていますとお話したら,本当にそうですよね、と頷いて頂いた。
私が勝手に画集を縮小コピーし、常に手帳にはさんで持ち歩いているジョミー、「2008ジョミー」の原画がそこにあった。単純にアニメブームが一区切りついているし、この雨のおかげで昨年と比べたらはるかにゆっくりご覧頂けますよとやさしく言って頂いた通り、しみじみと、本当にただしみじみとジョミーを見つめて来た。
画集「ただ一度の存在」の表紙をブルーと分け合うこのジョミーの表情こそは、まさに私の胸の中にいつづけてきたもの。ああ、このジョミーだと昨年の個展では遠くからしか拝見できないながら、そして初めて拝見する絵でありながら、もう何十年もずっとこの面影に支えられて来たのだと感じた、まさに私の理想の表情なのだ。このジョミーに会いたかったのだと本当に思った。
それを間近に,長々と眺められただけでも今日の幸福は大きすぎたと思う。
今年はまだアニメ『地球へ…』の余韻があるから10点前後ほどの展示スペースが設けられていたけれど、当然ながら竹宮先生は「地球へ…』だけにはこだわらずにいかれるのであろう。いや、個展も毎年必ずするとお決めになっている訳ではないご様子。状況的にできることなら、という柔軟な御姿勢で,ファンの熱意に応えて開催なさってくださっているものと思うので、個展そのものが確約されたものではない。そう思うと,今日のような機会がいかに恵まれた大切な場であるかがわかる。
ジョミーに会えるという幸福。
今日を最後に(私にとっては。個展は9日まで続く)もういつ会えるかわからないと思うと、かなり寂しい。これからも竹宮先生が個展を開催してくださるとして。そこにまた『地球へ…』が展示される機会があったとして。その時には必ず憧れのone&onlyをお願いできるよう、今日以降は気持ちを入れ替えて頑張って働こうとひたすら堅い決意をすることで寂しさをまぎらわした。せめて原画’は必ずお願いしようと思う。次回、またジョミーに会える幸福に恵まれたなら。

個展のアンケートの次回リクエストには「私を月まで連れてって!」「天馬の血族」の2タイトルを書いて来た。私が『地球へ…』!と全力で叫んでいる事はもう、先生様には十分すぎるほど伝わってしまったと思うので、それを別とすれば、という気持ちで。
でも竹宮先生の絵は本当に美しくて,実際は見せて頂けるなら何の題材でも良い、素晴らしいと心から思っているのだ。

先生にも御妹さまにも子供達を非常に可愛がっていただいたことが、体が震えるほどの喜びだった。オットの頭蓋骨の形はジョミーに似てるなと結婚する時に思ったという、私にはいたって真面目な真実のお話(本当に真実。せめて一カ所、ジョミー似な部分があって,大変救われたのだから)にとても笑って頂き、そのオットにそっくりな(いや、かなりヴァージョンアップしているとは思うが)息子の頭部がまたジョミーに激似と私が思っていて,冬の耳当てをしている時の斜め後ろから見る姿は秀逸なのだというお話にも笑って頂き、その後頭部を先生自ら撫でて頂いたり…今日は本当に本当にもったいない一日だった。
先生のサインを抱き締めて,帰りの車の中で思わず泣いた私は、たしか昨年もそうだったと思い出したのだが,昨年より一層幸福なことに、怖さすら感じてしまった。
なんだか「愛」で一杯である。

コメント
はじめまして。
私、先程撮りためてあった「地球へ」のTVアニメ録画を18話まで観たところです。かつて中学生だったころ、初めてこの作品に出会い、ジョミーに恋をし、ジョミーの背負う孤独に胸を痛め、幾度となく涙を流しました。竹宮先生の作品との出会いでもあるこの作品には、とても思い入れがある一方で、あまりにせつなく、今日まで撮りためたTV版を観ることができませんでした。しかし観てみればオリジナルストーリーにすっかりジョミーの影は薄く、ややがっかりしながらも、しかし、やはりジョミーの背負う孤独感に、一気に30年近くの時を溯り、今、胸が張り裂けそうな想いに駆られているところです。
その勢いでググったところ、こちらのブログに参りました。思い入れのあるシーンやセリフなどをあげていらっしゃるのを読んでいたら急に足跡を残したくなり、駄文を書きこませていただいてます。
また覗かせて戴きます。
  • yuma
  • 2009/09/20 4:19 PM
yuma様、はじめまして。こんばんは。
嬉しい書き込み、ありがとうございます。
いきなりですが、同志、と呼ばせて頂いてもよろしいでしょうか?
中学生の時に『地球へ…』と出会い、
それからずっとジョミーを想い続けて来たというお話、
まるきり私の過去と現在とシンクロしております。
検索でここまで来て頂けたなんて光栄です。
ジョミーは私の中で永遠に特別な人です。
大好きな人について共に語らえる人がいるというのはまた
さらに幸せなこと…
よろしかったらまた是非遊びにいらしてくださいね!
  • かりん
  • 2009/09/21 11:43 PM
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