池袋で迷わず

  • 2016.09.09 Friday
  • 23:05

根が引きこもり好きなタチなので、普段から電車一本で単純に行ける新宿にも、バス一本で単純に行ける渋谷にも行かない。

ましてや乗り換えてのその先は、年に一度行くか行かないかという頻度で、よほどの理由があってのことになる。

今日はその理由があり、池袋に朝9時には到着していたのだった。

 

自慢じゃないけどオットと結婚、東京に来るまで、生活の中での方向感覚は全て山側、海側で通してきた神戸っ子である。

神戸の山と海から離れた途端に、大阪の街でも苦労したけれど、東京ではもうハナからいろんなことを諦めている。

実はもう、神戸で暮らした歳月よりもこちらで過ごした時間の方が長いのだから言い訳できない状況なのだが、正直今だに南だ北だ、東に向かって、はたまた西に・・・と言われてもいつもさっぱりわからずごまかしている。

見知らぬどこかに行くときはいつもほぼ勘である。もうやけっぱちに近い。

そんな私が、滅多にこない池袋の駅から歩いて7分の場所に、果たしてたどり着けるかどうかは大変心もとないので、早めに家を出たら、バリバリのラッシュだった・・・・。やっぱりもう無理。私は二度と勤め人には戻れないだろう。

すでに一仕事終わった感たっぷりの私だったが、ここからが本番である。

充電器につないだスマホを持ってマップを見ながら歩き始める。

 

スマホのマップも苦手である。なんか途中で矢印がぐるっと回って悩んで定まらないことがある。非常に不安だ。

持ち主の私が頼りないからか、私のスマホもGoogleMAPも心もとないのかしら、と毎回変に反省しちゃうぞ。

 

それでも、なんと、ちゃんと目的地に着けたのである!

これは事前に、駅からの道筋を丁寧に説明してくれ、さらに周囲の景色を撮った写メまで添付してくださった役員さんのおかげだろう。

 

おかげさまで本日、愛する我が子たちの将来のための、特例子会社さん見学の会に、母たち揃って参加したのだった。

 

障害者雇用促進法というものがあって、国は企業に対し雇用している社員の中のの2%(社員が1000人という会社だったら20人)に相当する障害者を雇用することを義務付けているそうだ。そうしない企業からは納付金を徴収するとのこと。

そのため、特別支援学校や支援施設には企業からのオファーがあるし、コーディネイトしてくださる方たちに引き合わされて、障害ある子供達にも就労の道が開かれるのだが、それは少なくとも私たち保護者の目から見れば十分な数ではない。

またひどく不安なことでもある。障害者にとっての条件などを思うと誰もが、特例子会社に我が子が入社できれば・・・と夢見ることは多いのだ。(私はそうでもないけど)

 

特例子会社というのは、会社の事業主が障害者のための特別な配慮をした子会社を設立したもののことを言う。

それで大きな企業さんなんかだと必要な障害者雇用の人数を稼いでいる・・・というと言い方があまり良くないかもしれないけれど、まあそういうことだ。

障害者のために設立されている会社だから、周りも皆障害ある人で、健常な社員さんたち管理指導していただきながら、少なくとも、まったくの普通の会社の中になんとか入れていただいて障害ある子が働く状況よりは、おそらくは快適に、仕事をさせてもらえそうだと感じられる。

実際、そうしたところは増えていて、でも、だからこそ我が子を特例子会社に入れたい!と願う親御さんも増えていて、障害者の数の方が実際にある特例子会社よりも多い、という現状は誰にも容易に想像がつくところだろう。

しかも親の方では、特例子会社ならどこでもいいですから、とは思っていない。

どれほど理解を持って、安全に障害者を受け入れてくださるお気持ちがあるだろうか、というところから親の関心が消えることは永遠にない。

 

今日、見学を受け入れてくださった企業は誰もが知っている大手さんでいらして、特例子会社設立にあたっての理解と準備、実行されていることなど素晴らしかった。

本当に夢のようで、思わず私も、ここなら溺愛している我が子を入れさせていただけたら安心かもしれないと思えた。

それほどなので、定着率100パーセント、つまり定員一杯でこの先もそう欠員は出そうにない、つまり今年も来年度も新規採用はないらしいのだが。

まあ、そんなものですよねー。ため息をつくお母様方だった。

実際に我が子就職の見込みは無に等しいにせよ、大変良い勉強をさせていただいたのは間違いない。

 

私の、子離れしていなさっぷりは、もう随分前から有名で、もはや一種のギャグとして周囲に通っているほどのものである。

そんな私が自宅からそう近くもない大都会の真ん中あたりにありそうな、生き馬の目を抜くような場所に、超満員のラッシュの交通機関を利用しながら息子を通わせたいわけがなく(鼻息荒く言っちゃいますが)、長年ずっと、企業就労とか結構ですから、と身近な福祉作業所での息子の未来を思い描いてきた。

家から徒歩7分。地震が来ても台風が来ても大雪が降ってもすぐ迎えに行ける。日常的に通りかかって、もしかしたらパンを焼いたりしているかもしれない息子の様子ものぞけちゃう。そんな未来を夢見ていた。

が、皆に、お宅はもっとほかに行ってよ、と言われるのである。時に露骨なほどに・・・・。

確かに息子の力を思うと、近いだけで選択肢の幅を狭めてはいけないと思わないではない・・・。

健常な子供と違って、自分で自分の進路を決めることは難しい子たちである(いや、健常な子だって難しいことは多いけれど・・・)。

私の一存、思い込みで選択するにはあまりに重い責任かと思う。

だからいろいろ見たい、聞きたい、とここ最近は機会があるごとに、重い腰を上げてあちこちの見学会に混ぜていただくようになっているのだ。

 

メリハリある流れ、テンポよく、飽きることなく、次々に集中して取り組める仕事があることが大好きな息子。

学校ではどの作業にも良い評価していただき、目下は大好きな食品加工をさせていただいている。

そんな彼には、将来的にはどんな生活が向いているのだろう。

得意の食品加工ももうすぐ終わって、後期は事務作業を考えていると先日の面談では担任の先生に言われた。

今日、一緒に見学したお母さん方とお話しして初めて知ったが、事務の作業班に配属を希望している方は多く(お子さん自身ではなくお母さんが)、息子の学年からは3名しか入れないらしい。それを知らない私は迂闊にも担任から言われたことを話してしまったので、若干気まずい空気になってしまった。

息子は文字の読み書きが得意で(書き順はゾッとするほど独創的だが)数も理解している。つまり封筒を100枚、クリップを何十個ずつまとめて、というような指示には楽に従えるのだ。手先は親の私もびっくりするほど器用なので、細かな作業を苦にしたことはない。パソコンも得意で、ローマ字入力を小学生の頃からマスターしている。早くて正確な方かと思う。

確かに食品加工でなければ事務が得意で、いいのだろう。先生方はよく見ておられる。

 

特例子会社では清掃をメインの仕事にしているところが多いし、今日伺ったところもそうだった。しかもいまどき3K(くさい、きつい、汚い)ではない、脱3Kを心がけていますと軽やかにご説明いただき、実際に働かれている障害ある社員さんたちの様子はスマートで、生き生きとしていらした。

掃除も上手で丁寧にする息子。こう言う会社もいいなあと、いろんなことをぐるぐる考えながら帰ってきた。

 

慣れないラッシュの電車に乗って、慣れない場所に行き、食物アレルギーのことを周囲にもお店の方にも気遣っていただきながら緊張してランチをとって。

なんだかひどく疲れてしまった。

せっかくの池袋だけれど寄り道せず帰宅。もったいなかった。

 

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