訪問者
視線を感じて顔をあげると猫がいた。
輝く様な黒い毛並みがとても綺麗。
庭からウッドデッキにあがり、もろに我が家のリビングを覗いている。
その眼光の鋭いこと。
私と目があっても全く逸らさない。
怯むことなく、むしろこちらを睥睨しているようにさえ見える。
猫にこんな見られかたをされたのは初めてだ。
己の気配を消そうとも思っていなくて、
堂々と、私を、ついで娘を、ひどく傲慢な様子で、値踏みするように見切ったあと、
さらに遠慮のない様子で、室内をじーっと見回した。
何かを探しているようだと考えて、思い出した。
我が家の前の住人は猫を飼っていたそうなのだ。
外にださないよう、1年中窓を締め切っているご家族だったので、
壁やらカーテンやらにカビが生えちゃって、とオーナーさんがこぼしていらした。
この猫はその猫の知己、もしくは敵対している関係だったのかもしれない。
どちらにせよ、気になる存在だったのか。
私と娘をびっくりするほど長く、推し量るように見たのは前の住人かどうか確認するためかしら。
なんだか普通の猫の感じがしなかった。
この傲慢ぶり、相当お家で愛され可愛がられ、崇拝すらされているお立場なのではと推察する。
愛されているものの自信オーラが全身からあふれているのだ。
素敵な首輪がその証拠。
和風ちりめん柄の赤い紐に金の綺麗なメダルがついていて、
お守りのような雰囲気がある。
それと似たものを見たことがある。
オーナーの飼い犬、チビさんがつけているのだ。
その首輪が可愛かったので私が見ていたらオーナーが、
庭にくる猫が落としていったんだと思うのよ、
猫がくるのみたことない?とおっしゃったのだが、
この猫さんのことらしい。
なくしたけど、すぐに新しいのを付けてもらえたんだろうな。
前の住人猫は外にだしてもらえなかったということだけど、
ガラス越しにおしゃべりを楽しむ間柄だったのかもしれない。
もしくは逆に、めちゃくちゃ反発を感じていたとか。
詳しい事情はわからないけど、とりあえず記念撮影させてとスマホをむけたら、
面倒臭そうな顔をして、去っていった。
黒猫が不吉な知らせというのは、ヨーロッパのごく一部での伝承だそうで、
日本では昔から吉兆と言われていたそうである。
だとしたら今日のこの御訪問者さまとの濃厚な接触は
大吉兆だろう、と思うことにする。
昨夜から、
娘の予定になっていた日本舞踊の発表会と、卒業記念パーティーの中止が決まり、
芸能界、スポーツ界でもあらゆるイベント、興行が中止される流れの中で。
全国の小中高、特別支援校もすべて3月2日月曜日から休校にすると安倍首相から発表された。
まさしく、国からののおふれがでた、という感じだ。
オットの会社もテレワーク決定で、明日からもう出社しないという。
逆に私は、その3月2日からまた仕事に出かけるのだが、
福祉だから休みにはならないだろうな。テレワークもない。
ただ無駄に群れ集う場所にはいかないので、きっと大丈夫だろう。
そして、それでも何かいいことあるさ、とどこか楽観的に思えてしまう。
適当に、特に理由もなく、いつもそう思うことで
実際の小さなラッキーに繋がってきたのが私の人生だったから。
好きな民話は「わらしべ長者」。
性格出るなあ。
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